ROOTS of 810s
ムーンスターの靴づくり VOL.2
2021FWコレクションのSNOWF(スノーフ)と、PROO(プルー)。
SNOWFは1956年に南極観測隊の依頼を受けて開発した特殊防寒靴、
PROOはムーンスターが誇る食品・厨房シューズ“キッチンスター 03”にルーツがあります。
ここではルーツとなるシューズを紐解きながら、それぞれの特徴をデザイナーが語ります。
ー2021.10.22 UP
極限の状況に耐えうる
プロユースのノウハウを落とし込んだ
デイリーブーツ
極限の状況に耐えうる
プロユースのノウハウを
落とし込んだ
デイリーブーツ
ーSNOWFの大きな特徴を教えてください
まず、素材としてはアッパーに撥水加工を施したシンセティックレザー(合成皮革)、ソールから甲部分にかけて立体成型で水が入らないEVAを使用しています。
シンセティックレザーを使用することによって汚れのケアもしやすくなっています。EVAは水や雪に強く、ゴムのソールより軽量になります。日常生活の中でストレスなく気軽に履いていただけるよう、これらを採用しています。
また、構造としては履き口が観音開きになっており、ワンタッチで着脱できるという点が特徴です。この部分に関しては、SNOWFのルーツとなる特殊防寒靴から大きなインスピレーションを得ています。
カラーバリエーションはベージュとブラックの2色
ールーツとなった南極観測隊特殊防寒靴とは?
1956年にムーンスターが南極観測隊から依頼を受けて開発・寄贈した、マイナス20度以下の極寒に耐える国産の特殊防寒靴のことです。
1950年代、実際に使用されていた南極観測隊特殊防寒靴(協力:国立極地研究所)
試行錯誤の開発の末、日本隊はもとより海外隊の間でも高い評価を得た靴で、社内にある資料を紐解きながら製作を進めました。
SNOWFで特殊防寒靴から参考にした点は、履き口の観音開きを始めとする構造とソールから甲部分による防水性。更にブラッシュアップした点は素材や丈感など。日常生活に溶け込みやすいよう、フィット感のある柔らかな素材に変え、丈もぐっと短くしました。
特徴的なぐるぐる巻きの紐も、突き詰めて考えると少なくても問題がなかったのですっきりと1本に減らしました。
また、氷に刺さるガラス繊維入りの防滑ラバーも搭載しました。ガラス繊維を垂直に配置することで、特に氷や雪に高い防滑性を発揮します。防滑ソールとギザギザのソールを組み合わせて、凍結した路面や濡れた路面に強い靴を実現しました。
ーそのほか、日常生活に馴染む靴に仕上げるためにこだわった点は?
暮らしのなかで日々使っていただきたいため、快適さにもこだわりました。例えば、立体成型で足に馴染むインソール。しっかりと厚みをもたせることでクッション性が増した、履き心地の良い仕上がりです。内側にフリースを採用しているので保温性もあります。ムーンスターが開発したハイカット用の木型を使用しているのも特徴。長年に渡って心地よさを追求し、日本人の足に合わせたノウハウが集約された木型です。
デザイン面にもこだわりがあります。カラーバリエーションはベージュとブラックの2色ですが、どちらも合わせやすいニュアンスカラー。ブラックはチャコールグレーの雰囲気に近いですね。主張が強すぎず、着こなしにナチュラルに馴染む色に仕上げました。ロゴもワンポイントにまとめて、シンプルに。ごちゃごちゃした印象を与えないよう、すっきりとさせました。
エイトテンス自体のコンセプトが、暮らしに馴染む“日常の道具”。SNOWFではルーツとなるシューズの機能性に合わせやすさを加味して、よりスマートに再構成したモデル。雪や滑りやすいシチュエーションなどに強い、日常生活の幅を拡げる靴を目指しました。
キッチンシューズからうまれた
汚れに強く、滑りにくいローファー
キッチンシューズから
うまれた
汚れに強く、滑りにくい
ローファー
ーPROOの大きな特徴を教えてください
素材はアッパーに耐油性があり丈夫なシンセティックレザー(合成皮革)、ソールに油や水で濡れた床面に吸い付くマルチストッパーソールを使用しています。
ルーツとなるキッチンシューズは、甲の汚れを防ぐ構造がいちばんの特徴。PROOでも、甲部分を大きく覆うことで、日常的な汚れに強い靴を目指しました。ギリギリまで研磨機で削りこんで“角”を多く立てたマルチストッパーソールも大きなポイント。水や油のあるところでも滑りにくいつくりです。
カラーバリエーションはライトグレーとブラックの2色
ールーツとなった“キッチンスター 03”とは?
ムーンスターのなかでもロングセラーの食品・厨房シューズです。
PROOのルーツモデル、“キッチンスター 03”
PROOにいかしたのは、広く覆う甲の部分とマルチストッパーソール。試作を繰り返す中で、甲の部分を着こなしに馴染むようパンチングをなくしたり、履き心地と見た目のバランスを追求して何度も試したりと、日常で使いやすいよう大幅にブラッシュアップしました。
ーそのほか、日常生活に馴染む靴に仕上げるためにこだわった点は?
“キッチンスター 03”を発展させて、よりシンプル&ミニマルに仕上げたことです。
また、快適な着用感を求めて、柔らかいシンセティックレザーを使用したうえ、甲の内側にゴムバンドをつけました。履きやすく、しっかり足をホールドしてくれます。
デイリーユースはもちろん、カフェやレストランなどで働かれている方にもぴったりの一足になったのではないかと思います。
これからも自社のルーツを掘り下げて新しいプロダクトにいかしていきたいですね。